コールセンターの研修を計画する、その前に

1.コールセンターの研修計画、どうしていますか

みなさんのコールセンターでは、研修の計画をどのように検討されていますか。

市場通信では例年12月ごろから翌3月ぐらいにかけて、新年度にむけて様々なご相談をいただきます。

その中でとても多いのがコールセンター研修や教育です。

まずはその研修を検討している経緯などをヒアリングするのですが、その時点では明確な課題が見えてこない場合があります。

おそらく、計画立案のプロセスとして、現場で困っていることや本質的な課題を吸い上げ、対策や企画を練るのではなく、年度計画をたてることを主眼に検討をスタートしているためではないでしょうか。

先日も、あるコールセンターの教育担当者から、「管理者に『タイムマネジメント研修』を行いたいので、内容を相談したい」とのご連絡をいただきました。

そこで、なぜタイムマネジメント研修が必要なのかを確認すると、「ひと通りの研修はしてきたので、まだやっていない研修で、かつ誰にとっても無駄ではないものとして選びました」とのこと。

そのセンターにとって本当に必要な研修かどうか、疑問に感じられたため、何度か議論を重ねた結果、最終的には当初の計画とは全く異なる研修をするという結論に至りましたが、こうしたことは、決して珍しくありません。

コールセンターの研修や品質向上にむけての取り組みは、現場との調整も必要となるため、多くの労力とお金がかかるものです。やはり実施する以上は、本質的な部分に切り込み、成果を上げるよう努めるべきでしょう。

そのためには、「どんな研修をやろうか」ではなく、「何を改善したいか」を念頭におき、内容を検討することが大切です。

2.上質なコールセンターの電話応対に欠かせない4つの要素

以前のコラムでも紹介をしましたが、市場通信では上質な電話応対を作るには、以下の4つの要素がどれも不可欠だと考えています。研修を計画する上では、この4要素を中心に強み、弱みを整理し、必要な教育と優先順位を導き出します(図1)。

「スキル」とは、
電話応対に必要な技術(スキル)を指します。挨拶や声の出し方、言葉遣いから始まり、難易度の高いスキルとしては、傾聴や共感なども含まれます。

どのコールセンターにも共通して必要となるのが「感じのよさ」を作り出す技術で、それらはまず定着レベルを目指していきます。

「トーク」とは、
会話の内容を指し、「説明の流れ」「わかりやすさ」「商品・サービスの魅力」「気遣い」などに構成します。どんなに話すスキルが高く感じがよくても、会話の内容の質が低いと、お客さまには満足していただけないからです。

スクリプトによる標準化によって、ある程度までは「トーク」の質をあげることはできます。ただし、いくら精度の高いスクリプトを作成しても、コミュニケーター自身で考えながら話す部分は、どうしても存在するため、その精度を磨くことも重要です。

「マインド」とは、
電話応対者の、お客さまへの向き合い方や仕事そのものに対する姿勢を指します。

お客さまに相対する際の、「お役に立つ姿勢」「親身や親切な姿勢」「お客さまの思いを察する気持ち」など、企業人としての、「1件1件のお問い合わせを大切にする姿勢」「収益や事業に対する貢献の姿勢」などがここに含まれます。

「知識」とは、
商品・サービスや手続きに関する知識です。お客さまからの質問に対応するにあたって必要な知識を有しているか。正確性とともに、お客さまの理解度に合わせた対応が求められます。

3.必要なコールセンター研修を見極める

コールセンターの活動の最終的なゴールは、事業にどれだけ貢献できるかでしょう。研修の立案に際しても、その視点は欠かせません。

そのゴールを念頭に置きつつ、まずはお客さまの期待値に応える品質の維持、向上を目指します。顧客満足を得られる応対品質を形づくるために、研修を計画します。その際に前述の4つの要素を活用します。

ここから先は、要素ごとに、そこに弱点を抱えた場合の教育についてまとめてみたいと思います。

まずは、図2のように「スキル」に課題があるコールセンター。この場合は、電話応対に必要な各種技術を実践的に学ぶことが必要となります。

スキルの学習には、ロールプレイングなどがよく使われますが、その他に様々な応対の録音をお客さま視点で聞くといったことも、大変効果があります。いずれにしても、スキル面の教育は、「わかる」から「できる」まで導くことが重要です。

また、見落としてはいけないこととして、現場で管理・指導しているスーパーバイザー自身の「スキル」が弱いケースです。

スーパーバイザーを選出する際に、知識や経験の豊富さを重視すると、品質が決して高いとは言えないこともあります。

また、スーパーバイザーとしての教育を受けたことがないと、過去に自身が受けた教育を参考にするしかなく、それらの指導が現在の応対品質に即していないこともあります。

このような課題がある場合は、コミュニケーターとともに、スーパーバイザーにも「スキル」の教育を施すのがよいでしょう。

次に、図3は「トーク」に課題があるコールセンターです。このケースは、まずは現在使用しているスクリプトを確認します。

もし、スクリプトの精度が低い場合は、個々のコミュニケーターに「トーク」の教育をする前に、スクリプトのブラッシュアップをおすすめしています。

その後、コミュニケーターにむけてスクリプト活用のための研修を行います。スクリプトはどんなに優れたものであっても、ただ配っただけではうまく機能しません。

さらにロールプレイングは、スクリプトを使用するシーンや概要、個々の細かい説明までしっかりと理解させたうえで、現場でよくあるシーンを想定して行いましょう。

図4は「マインド」に課題を抱えているケースです。
「マインド」は「スキル」と「トーク」と強い相関性があり、「スキル」と「トーク」の質は高いのに「マインド」が低いことはまれです。

そのため、「マインド」の教育が最優先になるケースはあまり多くありません。ただ、一部では明らかに「マインド」に課題を抱えているセンターもあります。

あるセンターでは、とてもわかりやすくきれいに話すものの、お客さまとの距離感を縮めず、一定の距離を置きながら応対しているために顧客満足が得られていない、という状況でした。

背景には、マナーを非常に重視して教育を行ってきた結果、コミュニケーターは自由な会話展開になった際に敬語の誤りや「あの」といった口癖が出てしまうことを恐れ、会話を小さくまとめようといった心理が働いていることがわかりました。

また、別のセンターでは、お客さまの用件を承った後に社内の部署に引き継ぐ流れだったのですが、「私は取り次ぎ役です。私にお困り事についての細かい話をされても・・・」と、逃げ腰な印象が否めませんでした。

このように、「マインド」に明らかに課題がある場合は、軌道修正をするための教育が必要となります。加えて、センターのミッションやモニタリングの基準などを新たに定めた場合は、マインド教育が不可欠かつ重要となります。

最後に、知識に課題があるケース(図5)ですが、大抵のコールセンターでは、知識面の教育は充実していることが多く、ここに最大の課題を抱えているセンターは少数派です。

ただ、ここに一番の問題がある場合は、コミュニケーターは常に不安を抱えながら業務にあたることになり大きなストレスになるうえ、お客さまに信頼してもらえません。

当然、お客さまの満足度にも大きな影響を与えます。「知識」に課題がある場合は、真っ先に教育をする必要があるでしょう。

また、大規模センターや複数拠点があるコールセンターの場合は、トライアルとして、小規模な部門で試行して、その後、しくみをブラッシュアップした後にロールアウトといった段取りを踏んでいるケースもあります。

これまでに「コール検定」を導入いただいたコールセンター様においては、品質向上はもとより、センターが活性化したとの嬉しいお話をいただくこともあります。

品質が良いと、「お客さまが嬉しい」、そうすると「コミュニケーターも嬉しい」、最終的には「会社が嬉しい」と、コールセンター全体がプラスのスパイラルになります。

市場通信では、最終的にそのような素敵な循環をイメージしつつ、モニタリングがより本質的な活動となるよう、今後も現状に満足することなく、さらにサポートをし続けていきたいと考えています。

現在、品質管理において解決したい課題があれば、お気軽にご相談をいただけましたら幸いです。

参考になりましたか。

コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳

サービスのご紹介

市場通信の研修は、オリジナルのテキストやロールプレイングを取り入れ、楽しみながらアタマとカラダで吸収することができるカリキュラムです。研修を検討した背景に着目し、明確なゴールを見据えた学習をご提案します。