コールセンターの精度の高いフィードバックとは

1. モニタリング業務には2つの意味がある

コールセンターの運営担当の方にお尋ねします。現在のモニタリングやその後のフィードバックに満足していますか?

この問いに対しては、「モニタリング業務は、どの部門にとっても負担が大きい」「課題があるのはわかっていますが、長年やってきた仕組みなので変えることができない」「定期的なフィードバックはやっているものの、それが人材育成につながっているのかが疑問」・・・等と、どちらかというとネガティブな回答が多いのではないでしょうか。

コールセンター運営においてモニタリングやフィードバックは欠かすことのできない業務ですが、これらには、ふたつの目的があります。ひとつは、コールセンターの品質=お客さま満足を維持、向上させるため、定期的に状態を確認すること。もう一つは、個々のコミュニケーターの状態を把握し、育成活動に活かしていくことです。

そのため、多くのコールセンターで重要かつ不可欠な業務と位置づけられていますが、担当者の稼働が大きく、滞りなくこなすことに精一杯で、時が経つにつれてその意義が形骸化している場合も少なくありません。

2.モニタリングのフィードバックで人を育てる

今回は人材育成としてのフィードバックについて掘り下げてみたいと思います。

通常のフィードバック業務では、数本の応対をランダムにピックアップして、それらをモニタリングシートでチェックします。その後、コミュニケーターと一緒に結果を振り返りながら、今後にむけてのアドバイスをするのがスタンダードな流れです。

このとき、評価をした担当者がコミュニケーターにフィードバックまで行うケースと、モニタリング結果を現場のスーパーバイザー(SV)が引き継ぎ、彼らから行うケースがあります。どちらの方法にも一長一短があり、センターの運営体制や管理者のスキルなどで判断していくことになります。

3.重要なのはフィードバックのテーマ選定

フィードバックはコールセンター運営のなかでも難易度の高い業務のひとつです。

日頃、一生懸命にやっているコミュニケーターに対して、個別に課題を提示し、次までに克服するよう促していきますが、その際、やる気を損ねることなく、課題克服へ向けた動機づけをしなければなりません。

そこで重要となってくるのが、毎回のフィードバックでのテーマ選びです。例えば、モニタリング評価を5段階(◎○□△✕)で行った場合、品質が相当高いコミュニケーターでない限り、モニタリングシートには□や△が複数存在しているはずですが、そこから何を改善テーマに選ぶかが大きなポイントなのです。

最も避けたいフィードバックは、モニタリング項目を上からひとつずつ、「(1)オープニングの評価は△ね。なぜだかわかる?」と一緒に読み合わせ確認をするパターンです。

見ればわかるものに対して、あらゆる箇所でダメ出しをされている印象が残りますし、情報量が多くて、結局のところどうしたらいいのかが不明確になります。

私たちが作成するモニタリングシートには、あらかじめ、「よい点」と「改善したい点」をマークする欄を設けています。

教育の場では、褒めて伸ばすのがよいと言われていますが、フィードバックは明確な学びの場であるため、課題をしっかりと共有することが重要だと考えます。そのため、ここで知恵と経験を働かせたいのが、課題の選定です。

課題選定をする際は、単純に評価の低いものから選べばよい訳ではありません。また、モニタリング項目には、重要度によってウエイトがかけられている場合もありますが、そのウエイトの高いものから自動的に選定するのもふさわしくなく、個々の応対の特性を鑑みた上で見極めていく必要があります。

例えば、話し方のスピードが速く、お客さまに事務的な印象を与えてしまっているコミュニケーターがいた場合は、何よりもその雰囲気を変えていくのが重要です。たとえ、終話前の不明点確認がもれていて、✕の評価がついていたとしても、それらよりも優先して指導をします。

そうです。選定をする際は、「何がお客さまの心理に悪影響を与えているのか」「どこを変えていくと、お客さまにとってよい印象にうつるのか」といったお客さま視点が重要なのです。

また、本人の納得性が何よりも大切になるため、フィードバックの場では、今後の取り組みについて以下のようなやり取りをしています。

(良い点を伝える)
今回の応対を聞かせてもらって、○○の項目は**の点がとてもよかったですね!モニタリングシートに「Good!!」と書かれている、この項目です。
また、もうひとつ○○の項目も、**があって、お客さまのよい反応を引き出すことができていたと思いました!ご自身で応対を聞いてみて、どう感じましたか?(本人の感想を聞く)
ここは、□□さんの強みとして、引き続き大事にしていきましょう。

(課題点を伝える)
今後、さらに応対品質を磨くにあたって、どこに着目するのがよいか一緒に考えていきましょう。
私がモニタリングシートに、仮に、「Try!!」と書いてきた項目もありますが、□□さんは、改めて音声を聞いてみて、何か気になる点やトライしてみたい項目はありますか?(その後、二人で話し合いを通じて、最終的にふたつの項目を決定する)

5.今後のフィードバックの改善にむけて

フィードバックのテーマ選び、いかがでしたでしょうか。

今後、センター運営において、フィードバック業務の見直しをされる場合は、まずは現在の実態を把握するのがよいかもしれません。フィードバックはどうしても、個別のやり取りになるため、実際にどんな会話がやりとりされているかが、わかりづらいものです。

現状把握で見みえてくるのは、担当者によって、そのやり方や精度には大きな差があることかもしれません。それは至って当然の話で、多くのコールセンターでは、フィードバックの仕方が標準化されていない、フィードバックをする人がやり方を教わっていないため、担当者は見よう見まねで、もしくは過去に自分が受けたフィードバックを思い出しながら実施しているのではないかと想像します。

現状把握をすることで、課題が明確になったら、それらの原因を丁寧に精査した上で、改善に向けてのアクションに取り組むことになりますが、そこでは、フィードバック担当者の教育も必要になるかもしれません。

モニタリング、フィードバックのかけた労力に対しての効果を確かなものにする。今後のモニタリング、フィードバックの改善のヒントになれば幸いです。

コールセンター・チーフコンサルタント 石橋由佳

サービスのご紹介

モニタリング・フィードバック業務をアウトソースしていただけます。応対品質の向上に向けて、丁寧かつきめ細かくご支援いたします。

コールセンターに求められていることは何か?に着目し、センターの「あるべき姿」に向けて、応対品質の改善をお手伝いします。