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自治体のCRMを考える!

mail.jpg今回第7回のメールマガジン「市場通信 ~ ITマーケウォッチャー」は、最近取り組まれている『自治体CRM』について述べることとする。1999年後半から、マーケティング現場を通してCRMについて様々なことを書いてきた。事実多くのプロジェクトを通して数多くのソリューションを展開し、貴重な知見の集積ができた。その間にCRMは形を変えつつあり、またその考え方や活用形態も少しずつ進化している。
先日当社のblogで書いた「市民満足と自治体コールセンター」もその1つだった。横浜市と札幌市のコールセンターについて書いた直後に、札幌市の札幌市役所企画調整局情報化推進部IT推進課の北川憲司氏(平成14年~助役直轄プロジェクトCRM担当係長)からコメントを頂いた。北川氏のWEBサイトを閲覧して、こんなに前からCRMやコールセンターについて検討している内容を見てまたまた驚いてしまった。それはいろんな取り組みがなされていることと、今までのお役所とは異なる考え方で進めているからである。

そうした施策に取り組んでおられる方に、いままでCRMプロジェクトを推進してきた経験者として、今後自治体がCRMに取り組む上での問題点や方向性について提言する意味で、今回は述べさせて頂きたい。逆に企業の方々にはその違いを考えながら、自社の場合を当てはめて頂ければ幸いである。

同氏が2003年7月6日付けの論考「自治体CRMとは何か」を読むと、冒頭非常に興味深いことが書かれている。

■北川氏のWEBサイト→ コチラ
■札幌市役所→コチラ
■札幌市コールセンター→コチラ


<全く異なる!一般企業のCRMと自治体CRM>

『・・・市民はこれを不思議な目で見ているかもしれません。同じ役所なのに、ある部署はサービス向上のためにアンケートに協力してくれと言ってくる。ある部署は財政上の理由からサービスを削減しますと通知してくる。またある部署はこれからパートナーとして市民の皆さんと共に考え施策をつくっていきますと言い、別な部署では市民に十分な説明なしに大規模な公共事業を進めている。ある部署では信頼される役所を目指して情報公開に務めているが、ある部署では窓口で市民をアンタ呼ばわりする職員がいて、その奥で別の職員がヒマそうにお菓子をつまみながら談笑している。市民から見て「サービスが良くなった、役所も変わった」と思えるものはほとんど記憶になく、明らかに変わったとわかるのは公共料金の値上げなど市民の負担が増えるものばかりです。・・・』(上記サイト:【論考ー自治体CRMとは何か】から一部抜粋・引用)

こうした市民の誰もが思っていた役所に対する不満や不信を、1市役所の担当者がはっきり述べるようなことは今までなかったことである。それらを堂々と述べること自体、役所は変わろうとしていることが読み取れる。もちろん、市長や市の方針として「変わらなければいけない!」という強い方針の下で行われていることが感じられる。

この論考を読むとおわかりになると思うが、「CRM」「顧客」「顧客志向」「顧客接点」という言葉が頻繁に出てくる。また、企業におけるCRMと自治体におけるCRMの違いが述べられている。

しかしながら、明確な自治体CRMという定義がなされていないようである。これについては企業のCRMでさえ明確な定義づけができないのに、自治体でのCRMが定義づけできるわけがない。

定義づけに時間をかけるのであれば、それこそ無駄な時間であり、それらを論議すること自体ナンセンスであると思われる。市民すべてが顧客と考えると、その顧客は逃げることもなければ、囲い込むこともない。新規の顧客獲得も考えることもない。競争がなく利益をあげる必要もない、顧客データの不備もなく顧客の全貌がわかる信頼できるデータベースが既に装備されている。何の不自由もない環境があるものの、他との競争がなければマーケティングに取り組む必要性はなく、競争や目標となる数値がなければマーケティングは成立しないし、CRMも必要がないと思われるのだ。

しかしながら、CRMを活用する利点として考えるならば、市民対応の改善をする上で各セクションを横断する必要があり、これが重複する施策や業務が浮き彫りにされるという利点はある。市民対応における一番のネックは縦割り組織であるからだ。また、市民対応において、そうした施策や業務の優先度、つまり業務のプライオリティが明確になり、かつきちんと実施されるのであれば、その効果は自ずと実証されるであろう。

市役所における業務改善の骨組みに『CRM』という概念や言葉を借りて推進したいという姿勢は理解できる。また、一般企業並みに、かつ顧客対応と同じような気持ちで対応をし、それを内側(市役所)にも外側(市民)にもアピールして、確実に新たな体制を進める意気込みも十分伺え知ることができる。

しかし、その評価は市民からの評価であり、他市と比べてどれくらいの水準であるかは定かではない。そうなると、自治体CRMは全国的な取り組みの中で「同じ評価基準に従った」競争があって、初めてCRMの良さがわかるのであろう。さらに、CRMは元々企業の舞台裏の戦略であるために、市民に向けて「CRM」をアピールすること自体おかしいと思うのである。

つまり『今まで効率的に、効果的にやってこなかったため、これからはしっかりやります!』ということになる。税金を払っている市民からすると複雑な気持ちがする。むしろ自治体CRMの前に『自治体SFA』でも導入して、各業務担当者の日常の動きが知りたいという思いにかられてしまうかもしれない。いずれにせよ、一般企業のCRMと自治体のCRMの根本的な違いや方向性を5つのポイントでまとめてみた。

<自治体CRMの5つのポイント>

1)一般企業と自治体とは根本的に異なる。顧客対応や顧客満足という表面上の言葉は顧客志向を 求めるものの、一般企業の利益追求の基本姿勢からすると、すべての顧客にあまねく公平ではなく、利益をもたらしてくれる顧客を優先する。とくにCRMの根本的な顧客情報を活かす上で前提となるのは、優良顧客にしっかり対応し、そうでない顧客にはそれなりにという基本方針は変わらない。自治体の姿勢とは逆行する。

2)逆に自治体が利益追求型の一般企業と同様の姿勢に対し、市民がどのように受け止めるのか。市民が一般企業と同じような対応やサービスをほんとうに求めているのか、という疑問がある。自治体に求める基本的な評価基準が異なっていると思われるのだ。

『価格、サービス、品質、ブランド』という一般企業の尺度に対し、自治体においては『安心、信頼、親切、迅速、確実』という最も基本的な尺度が市民からまず求められるであろう。一般企業が提供するのは商品(サービスとしての商品も含む)であり、自治体は組織としての基本的なサービスを不満なく普通にやってもらえばいいのであって、それ以上の過度なサービスは求められていない。いわば、組織的な問題を解決してもらえば出来ることであろうと、誰もが思っているに違いない。

3)CRMという考え方や方針を打ち出すことは非常に興味深いが、組織の楽屋裏をさらけ出してまで、『CRM』を実践していることをアピールする企業はない。当然企業のイメージダウンになるからである。販促効果として、あるいは先進的なイメージアップのために『CRM』セクションの配置をアピールする企業はあるものの、その内容を公開することはない。内部改革を外にアピールする必要はないと思うのである。

4)CRMの考え方や言葉は一般企業にはかなり浸透してきたが、未だに統一的な定義が出来ない広 い概念であり、実際の現場での解釈も領域が広すぎて焦点がぼけてしまう傾向にある。とくに一般市民に理解を求める言葉としては不適格であろうと思われる。例えば企業において、このCRM関連の業務に就いている人が自分の家族や子供に、CRMを理解できるように説明することができるかどうか、考えて頂きたい。小生も然りだが、きっと近親者に説明すると『よくわからない』という答えが返ってくると思われる。

5)氏の論考にもあるように、自治体CRMを最大の難関は自治体の組織であろうと思われる。CRMの 考え方や論理が自治体という組織の一人一人に理解されるとは思えないからだ。CRMはコールセンターやWEBサイトなどの実施レベルに落とし込むと、それはマーケティング現場のような実施論が展開される。

それがCRMだと錯覚するが、基本方針や基本的なコンセプトを詰める段階ではマネジメントそのものになり、どんどん究明すればするほどに組織や人的資源、あるいは通常業務の改善に焦点は絞られる。つまり、やればやるほどに自治体の職員はリストラされ、かつ業務が効率的に集約されるのである。そこまで腹を決めてやるぐらいの覚悟が必要である。

<果たして、CRMという言葉が自治体に必要なのか?>

現在、札幌市では今までとは異なる方法で、WEBサイトの活用やコールセンターの実施、あるいは市民の満足度の計測などがされている。だからと言って、『自治体CRM』という言葉を頭に掲げる必要はない。

逆にわからなくする必要は無いと思うのである。自治体という組織内業務の意識改革や変革は実施レベルの積み重ねで十分市民や世論はわかってくれると思われる。一般企業でさえ、完璧なCRMを成し得ていない現状で、あるいは自治体の現状を踏まえると、あまりにも高いハードルを目指しても実現の光さえ見えてこないのではないだろうか。そんなに無理しないで欲しいというのが、小生の率直な気持ちである。

今回は自治体CRMについて述べさせて頂いた。決して自治体CRMに対して反対しているのではなく、もっと市民にわかりやすい前述のコールセンターやWEBサイトなど実施レベルの積み重ねにエネルギーを使って欲しいと思うだけであり、自治体CRMの定義論争や方針作りに『CRM』という誰も一言では説明できないような概念を敢えて持ち出す必要がないことを示したかっただけである。

また、自治体の組織や体質などの改善についてはここから切り離し、コミュニケーションITの活用を推進することで無駄な業務や重複する作業が見えてくると思われるのである。行革の一環として自治体の業務改善に積極的に取り組んで頂きたいと思う次第である。今この時代において、自治体が変革を求めて動き出していること自体、小生は高く評価している。是非頑張って頂きたい。

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[自治体のCRMを考える!] 2004年3月18日

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