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変わるCRM

crm3344.jpgダイヤモンド国際経営研究所発行の月刊誌「リスクマネジメントBusiness」2005年4月号は、『特集 動き出した個人情報保護法』というテーマであり、その中で『変わるCRM』というタイトルで小生への取材があり、その記事が掲載されている。とくに個人情報保護法とマーケティング・CRMの現状と今後の方向性について、述べさせた頂いた。これは、その記事を抜粋・引用させて頂いたものである。(それゆえ、以下の内容は小生が執筆したものではない)

CRM(Customer Relationship Management)は顧客情報を管理、活用することで、顧客との継続的な関係構築を目指すマーケティング手法のひとつである。直訳すれば「顧客関係マネジメント」となる。ところが個人情報に対する意識の高まりから、これを望まない消費者が増えているという。個人情報の施行を機に、マーケティングの世界が大きく変わろうとしている。

<意外にもマーケティングの現場では個人情報保護法を歓迎>

個人情報の流出事件が相次いだことで、消費者の危機意識は高まっている。ウイルスワクチンやファイアーウォール関係のソフトを開発する株式会社シマンテック(東京都)が2004年に行った調査によると、インターネットを利用する上で不安に感じることのトップは「個人情報の漏洩」(87.9%)であるという。同社の調査なのだから「ウイルス感染」が圧倒的かと思いきや、こちらは86.7%で2位らしい。誰もが自分の情報の漏洩に不安を感じていることが浮き彫りになった。

個人情報を入手する手段はインターネット経由以外にもある。その代表が市販されている各種名簿の存在である。個人情報保護法では名簿業者などから個人情報を購入する事自体は禁止されていないものの、不正に取得されたものでないことが大前提となる。不正入手名簿だと知って購入・利用した場合は方に違反する恐れもあるからだ。しかし現実には、名簿の購入企業がそれを確認する事は難しい。

「名簿業者から個人名簿を入手し、大量のDMを打ったり、片っ端から電話などをしたりして顧客を獲得し、大きく成長した企業はたくさんあります。ただ、そういう荒っぽい方法は企業の信頼性を損ねることもあるし、個人情報保護法施行という状況下では大きな危険を伴います」と、マーケティングのコンサルテーションを手がける一方、金沢工業大学大学院の客員教授としてマーケティングを教えている波多野精紀氏(株式会社市場通信代表取締役社長)は語る。

名簿業者を利用すれば、何万件ものリストを安価に入手できることは知られているが、最近は規制強化の影響で名簿の流通量そのものが減り、個人情報一件当たりの価格も上昇しているという。「われわれは法律の施行を歓迎しているんですよ」(波多野氏)と意外な言葉が返ってきた。

広告などに印刷されたフリーダイヤルやWEBサイトを見た人から電話や各種問い合わせなどをしてもらい、そこからコミュニケーションを図っていくのが本来のきめの細かい販売促進、セールス手法なのであり、個人情報保護法により、あやまった手法に規制がかかることになって、むしろ望ましいというのだ。

<ブランド維持のためには販促手法の変換が求められる>

DMを送ってレスポンスをみるというマーケティングの手法は、もともとアメリカから伝わった。アメリカでは郵政公社が持つ住所変更データベース(National Change of Address)により、個人や法人が引っ越しをした場合も常に情報が更新され、データベース・サービス会社が有料で提供している。したがって、どこに引っ越しをしてもDMが届くシステムになっているという。

「各企業は公認のデータベース・サービス会社を通じて名簿を購入します。クリスマスにDMが70通も届いたなどということは不思議ではないし、拒否しない限り、あらゆる人にDMが送られます。日本にはそういうシステムがないので、出所の分からないグレーな個人情報を名簿業者から入手するのでしょう」(波多野氏)

波多野氏は「拒否しない限り」というのはメール・プレファレンスサービス(MPS:Mail Preference Service)のことだ。情報主体、つまり本人が差し止め請求を行えば、受取拒否者として登録され、それ以降は原則的にDMは送られてこない。日本でも、日本ダイレクト・メール協会が同様の停止サービスを行っているが、同協会に加入しないDM業者や停止サービスに賛同しない一般企業のDMを止めることはできないため、その効果が限定的だ。ちなみにアメリカでもMPSへの登録者は2%程度と少ない。何も送られてこないのも寂しいし不便だと考える消費者は少なくないようだ。

個人情報保護方では名簿の購入そのものは違法ではないが、問題はその情報が正規に取得されたものかどうかという点だ。この条件を満たす市販名簿はごく一部と言える。「今後はお客さんが歓迎してもらえるような、本来のきめ細かなマーケティングが主流になるはずです」と、言う波多野氏は、マーケティングの専門家として、この法律には期待をかけているようだ。

「ただし、消費者側も企業側も、個人情報の取り扱いに過敏になるきらいがありますね。企業の場合は、本来は合法的な方法であっても、あえて避ける可能性はあります。まかり間違えばブランドイメージなどに傷が付く恐れもあるので、大手企業ほど腰が引けて慎重になるかもしれません」

すでにDM中心の販売促進戦略を見直す企業も出始めている。これまで、住民基本台帳などを利用して不特定多数の学生にDMを送っていた学習塾などでもDMを廃止する方向で検討を始めた。

<ダイレクトマーケティングでは顧客のパーミッションが不可欠>

「キャンペーンの応募の処理では、これまではハガキを送ってもらい、それを入力するような方法が多かったのですが、最近はPCのメールや携帯メールで入力してもらうのが普通になりつつあります」(波多野氏)

外部の委託業者を使う場合、委託業務契約のほかに、秘密保持契約を結ぶことも多くなってきたが、だからといって、外部委託業者の一社員の過失がクライアントである自社のイメージダウンにつながることを防げるわけではない。個人情報漏洩が企業のイメージダウンにつながることについて波多野氏は、四月以降はマーケティングやセールスプロモーションの方法が変わっていくだろうと指摘し、「これまではデータの一元化とか、再利用などといわれることもありましたが、入手した個人データを再利用することは、私は勧めません。再利用するにはパーミッション(許可)が必要になるし、そのためにはコストがかかり過ぎます」と述べる。

たとえ、利用目的内であっても、時間がたてば本人が心変わりすることも考えられるので、常に顧客などとのコミュニケーションを取りながら、データの最新の状態に保っておくことが重要だ。「DMや電話などによるプッシュ型の販売促進の手法はやめて、プル型に転換すべきでしょう」(波多野氏)

プル型とは、たとえば、ウェブを見た人が自らパーミッションにOKを出して参加していくようなスタイルだという。自分の意思で選択させるようにするとか、ウェブでパーミッションをとりつつ、ハウスリストを獲得していく方法も有効だという。

これまで住民基本台帳などを利用したDMを送っていたベネッセコーポレーションも、この3月からJCBやUFJと提携して独自カードを発行する。カード会員という限定された対象に、購買履歴などを分析・活用したきめ細かい情報を提供していくという。

また、メールを利用した情報の入手の仕方については個人情報そのものの扱いも重要が、メールのログ(受信記録)の廃棄の仕方が問題になるようだ。情報漏洩の多くは人為的なところに原因があるので、入手した個人情報の社内での扱いには細心の注意が必要になると思われる。

<個人情報保護の浸透とこれからのマーケティングのあり方>

個人情報保護法施行一か月前となった現在、同法への理解やその対応についてはどの程度進んでいるのだろう。「個人情報保護法の存在自体は知られていますが、最近になってあわててPマークやISMS取得に躍起になっているくらいですから、全社的に取り組み体制を整えているところは少ないでしょうね。担当している役員や部署は一生懸命ですが、社内ルールの確立が急務だといえるでしょう」(波多野氏)

どうやら、企業の対応はまだ十分ではなさそうだ。付け焼き刃的な対応をするよりも、顧客と長くゆったり安心してつきあえる関係性を重視すべきだという波多野氏は、「お客さんとのコミュニケーションも大事なので、誤解のないようにしっかりとパーミッションを取ってきめ細かいサービスを提供していく必要があるでしょう。

プッシュ型で強引に顧客を集めるのではなく、むしろ、既存の顧客を離反させずにとどめておくようなサービスを徹底すれば、新しい顧客は自然と増えるでしょう。そのほうがコストパフォーマンスは高いですから。法律の施行後はマーケティングの世界でも、『安心、安全』がキーワードになるでしょう」と予見する。

施行後、しばらくはさまざまな混乱やトラブルが発生すると考えられるが、個人情報の正しい扱い方、個人情報とマーケティングのあり方が次第に見えてくることだろう。

ダイヤモンド国際経営研究所発行月刊誌「リスクマネジメントBusiness」2005年4月号『特集 動き出した個人情報保護法』から

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[変わるCRM] 2005年4月 7日

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